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ラゲッジスペースの広さの計測規格の謎に迫る。VDA、DINとは?

ラゲッジスペースの広さは容積(リットル)で記載しますが、マツダの場合はその計測方法として「DIN」と「VDA」を使っています。「で?」という話かもしれませんが、なぜこんなことに関心を持ったのかというと、


DJデミオがVDA方式で280L、CX-3がDIN方式で350Lと、CX-3の方が70Lも多い。ただし、両者は計測基準が異なる。実際は70Lも差がある(CX-3の方が大きい)ようには見えないし、ひょっとして何かを意図的にごまかしてる?って思ったこと

がきっかけです。とりあえず気になったので、ちょっと探索してみました。

そもそもどうやって計測するの?

imagesこういうブロックを荷室に積み上げて計測します。このブロックのサイズと計測手法がDIN等によって規定されている、という訳ですね。ブロックサイズの記載は明確ですが、計測手法がどの程度厳格に規定されているのかは、規格の原文にまでは当たっていないので不明です。

車種別のDINとVDAの採用傾向を見る

車種別に、どちらの方式が採用されているのかを見ると、こんな感じです。

方式 車種
VDA GJアテンザ(474~506L)
CX-7(455L)
BMアクセラ(312~419L)
RX-8(290L)
DJデミオ(280L)
DIN CX-5(500L)
CX-3(350L)
NCロードスター(150L)
NDロードスター(130L)

SUV系は全部DINかと思えばCX-7はVDA。狭めのラゲッジルームしか持たない車両はVDAかと思えば、ロードスターはDINでRX-8はVDA。発売時期も関係なさそう。少なくとも採用車種の傾向からはVDA、DINの採用基準を見いだすのは難しそうです。

それよりも、DJデミオはエイトより荷室容量が少ないことに驚きますよ・・・

規格そのものについて調べる

車種別の傾向からはなんとも言えなかったので、規格そのものについても調べてみます。

VDA方式は有名ですね。ドイツ自動車工業会(Verband der Automobilindustrie:VDA – Home)の定めた方式です。一方のDIN方式は、オーディオやナビでよく聞くあの「DINサイズ」の「DIN」ですが、そもそもはDeutsche Industrie Normenというドイツ工業規格です。DIN規格といっても色々な規格があり、たとえばSmart fortwoのプレス情報(Press Information – Daimler(Word))には


And when it came to measuring the cargo capacity in litres, the developers used more than just the standardised blocks with an edge length of 200 x 100 x 50 mm as specified by the Association of the German Automotive Industry (VDA) and regulations DIN 70020-1 and ISO 3832

とあり、ここには「VDAとDIN70020-1とISO3832によって規定された計測用のブロック」という記載があります。この「DIN70020」については、調べていくと「DIN70020」と「VDA70020」の両方の記載が存在しており、何らかの関係がありそう。さらに突っ込んで調べるとDINを策定する機関はVDA傘下の組織(DIN/FAKRA)とのことで、無関係どころか、べったりですな。


ドイツにおけるISO/TC22に対応する機関はVDA(ドイツ自動車工業会)傘下に設けられたDIN/FAKRAが標準化活動の任に当たり既に100年 を超える歴史を有する。(中略)DIN/FAKRAの標準化活動は類別すると,ISO,EN(欧州規格),DIN,さらには,外部には実質上非公開である VDA規格制定にかかわる活動を行っている。

https://www.jisc.go.jp/international/tokusyuu/tokusyuu0908.pdf

VDAとDINは相当近い関係で、実は、VDA=DINなのかもしれません。うーん、どうなってるんだろうか。

ということで、マツダに聞いてみた。結論は・・・

最初からそうしろよという話もありますが、大本営発表を鵜呑みするのは私の主義ではないので。驚いたことに、マツダいわく、


DIN と VDA 方式は一緒です。

だそうです。えー、そうなの?? 本当にDIN=VDAなら、どちらかに記載を統一すべき(表記を変える理由がない、分かりにくい!)という話ですし、社内でそれが統一できていないのは問題あるんじゃないの?とも思いますが・・・

海外では「実容積」を計測する記事も多数あり

実燃費には皆さん興味があるところでしょうが、「実容積」にはあまり興味が無いですかね。海外では実容積を計測する記事が時々掲載されており、特に大本営発表を全く信じてない中国では実容積計測記事が結構あります。さすが中国。

(参考)大部分表現不錯後備廂容積揭底測試-汽車新地-北方網DINブロックDINブロックをラゲッジルームに詰め込む00300218801_08f845baこの記事によると、どれも実測値の方が少ないという結果になってますね。

メーカー/車輌型式 実測容積(升) 政府公表
容積(升)
実測値との差分(升)
Skoda Octavia 535 590 -55
Ford 車種名不明 400 448 -48
Volkswagen Scirocco 286 312 -26
長安 CS75 405 590 -185
※中国では1升=1L
※シロッコの数値は、元記事に間違いがあったので修正

公表用の実燃費の数値を上げるために必要な、超微妙なアクセルコントロールに長けた職人のような人が各社にいると聞きますが、この荷室容量でも同じようにブロックを詰め込む達人がいるのだと思われます。それで、実測値とかけ離れてくると。

面白いと思ったのは、長安のCS75の容量が公表値より185L少ない原因として「トノカバーの位置を上限とせずに、その上に窓が隠れるレベルまでブロックを詰め込んだから」と分析している点です。日本でも一応荷室容量の右側に小さく(DIN方式)とか(VDA方式)とか書いてあるものの、詳細な条件は記載されていません。 こういうある一定の統一条件下で、メーカー横断で容積を計測するのはイイですね。メーカーにも適当な数値は計測できないというプレッシャーになると思いますし。

DJデミオとCX-3の差分の70Lは結局何だったのか?

VDAとDINが一緒だとすれば、DJデミオとCX-3の間にある「70L」の容量差は正しい、ということになります。でも、実車を見るとそんなに差があるのかなぁ?というのが個人的な感覚なのですが、どうなんでしょう。

この差は、DINブロック職人の詰め込む技と、素人の目測の差なのでしょうか(笑)

ちなみに、UKのサイトで見るとBOSEを搭載したCX-3の荷室容量は287Lとあります。BOSE搭載のCX-3の実車と、DJデミオの荷室を見比べてみるとほんの少しCX-3の方が小さいかも?って思ったものの、この数値は正しそうな感じがしますね。違和感がありません。日本の場合は、どのグレードの数値かも明記されていないですが、恐らく最下位グレードでしょう。日本ではある1グレードの数値しか掲載されていないですし、この点、UKのサイトはユーザーに優しいですね。

・・・ということで、ここまで書いてそれらしい結論は得られたものの、なんだか釈然としない感がはあります。どこかの雑誌かWebメディアあたりでこういう荷室容量の実測企画をやってくれることを期待。だれかやってー

余談

ちなみに、北米にはSAE J1100というスタンダードがあり、計測手法は一緒ですが計測ブロックのサイズが異なるため、結果は上記のDINやVDAとは異なる数値になります。ややこしい・・・
(参考)Motor Vehicle Dimensions

(参考)SAEの計測手法で導き出される値は、実際の利用シーンに必要な数値とは乖離が大きいので問題、という記事。
Why Cargo Specs Can Stretch the Truth
https://www.cars.com/articles/2014/03/why-cargo-specs-can-stretch-the-truth/

 

 

 

 



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  1. […] いずれもシートバック上端の実用的な積載量での数値です。CX-8の容積の測定方式はマツダから回答頂きました。(余談ですが、容積の測定方式としてDINとVDAの意味するところは同じみたいですね。) […]

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